今年もあと僅かです。皆様はどんな年でしたか?
私のこの一年は仕事は順調、プライベートではいろいろな経験を積むことができ有意義な一年となりました。良いことも悪いこともありましたが、全てが私の人生において意味あることであったと感じています。
そして今年も【パトふれくん】のための毎日のルーティンワークであるふれんずチェックのお陰で、福岡の不動産市場や業者の動きは手に取るように分かり、不動産業者の体たらく振りに辟易とした一年でもありました。そんなこんなを振り返ります。
不動産市場はますます閉鎖的に
10年一昔とは言いますが、10年前位に私はよく知り合いの業者に「ふれんずを毎日見ていると月に1物件はお宝物件が見つかるよ」と言っていました。買取物件はふれんずの情報からも仕入れ、手頃で良質な物件も目にしていました。
その頃には既に現在の会員制を構築しており、物件を購入したい会員様には「ふれんずには物件が集約しているから常に情報を張っておいて下さい」とアドバイスをしていたものです。
しかし現状はどうでしょうか?良質な物件はなかなか見当たらず、業者によって買い取られた物件が常軌を逸した金額で販売されています。また仲介物件も中古なのに新築分譲価格を遥かに超える金額で販売され、人気のある立地の物件はそれでも売れて行きます。そうなると基本的にドリーマー気質の不動産業者は二匹目のドジョウを狙い、物件を高値で販売する…そのループが続いているのです。
また私のように細かく物件情報を見ていると分かるのですが、以前販売されていた物件が成約して情報が消え、その数ヶ月後に他業者の売主物件として販売、その後また物件情報が消え、また数ヶ月後に他の業者が売主として販売している、そんなケースも目にしています。
このように物件がお手玉のように業者間を渡り歩き、販売され続けているのです。
市場に目を向けると以前はネットに物件情報を登録したら、エンドユーザーから何らかの反響があっていました。しかし近年は値付けがそこまでおかしくない物件にも全く反響のないことも多々あり、エンドユーザーの需要が確実に減っていると感じます。
そのことは業歴の長い業者だったら体感しているはずです。そんな中、従業員や経費の多い不動産会社にとっては利益を確保するために【両手仲介】に拘り、売却を依頼された仲介物件をまずは内々で客付をしたり、敢えて一般媒介で売却を受託し『共同仲介』が基本原則であるふれんずには物件情報を登録せず、athomeやSUUMO等の民間不動産情報サイトに登録をして業者の客付を断るケースも散見されています。
このように業者にとって“売れる”良質な仲介物件はエンドユーザーの目に触れることなく自社の顧客に【両手仲介】で売却したり、買取業者に物件を卸すことで【ダブルの両手仲介】で販売されることも増えています。
人口減少社会に突入している日本では住宅需要は確実に減少しているのに不動産業者の数が増え続けてる、そんなアンバランスな実情がますます不動産市場を閉鎖的にしているのです。
ネットによる物件情報の弊害
私は1998年からインターネットで競売不動産情報の配信を始めましたが、その頃からインターネットで不動産も売れていくことを確信していました。しかしその話を先輩業者に話しても「不動産がネットで売れるはずない」と笑っていたものです。2000年からふれんずがスタートし少しづつネットによる不動産売買も進化してきました。
。ネットにより情報が民主化されたためお客様の質が変化したことにより、気がつけば販売手法も変わり新聞広告やチラシ、オープンハウスを行うことも無くなりました。それに伴い小手先のテクニック(?)で物件情報を荒らす業者も出てきました。
物件情報に『新規登録』がつくことに拘る最もバカバカしい手法としては…
・登録した物件を削除してまた登録することを繰り返す
・販売価格を1万円ずつ下げる
・販売価格を短期間で上げたり下げたりする
・販売物件の現況を「空室」から「居住中」「賃貸中」に変更するのを繰り返す…
ネット登録は簡単に情報の内容が変更できるため、このようなことをする業者が一定数存在します。物件を熱心に探しているエンドユーザーから見ると「またこの物件!」と悪目立ちするのに気づかないでしょうか?
また情報を登録するのも削除するのも簡単で、悪質なケースとしては専属・専任媒介で売却を受託した物件を売主に発行義務のある登録証明書を取得するためだけに一瞬物件を登録をして取得後は情報を削除する…、そんな手法も行われています。
とにかくネットが得意ではなくても利益を得るためのアイデアには長けているのが不動産業者という生き物です。
不動産業者の質の低下が顕著に
そんな不動産業者ですが参入障壁が低いのと「すぐ儲かりそう!」と思うのかどうか知りませんが、とにかく新規参入が多いのも特徴です。
ここ最近の業者のHPを見ると、以前の不動産業界では目にすることの無かったライトな(チャラいとも言う)タイプの業者が増えてきました。また金融機関が不動産業者に融資をすることが増えたため買取業者の数も激増し、開業してすぐに買取をする業者も目にします。
そんな業者の中には価格の相場も分からずとんでもない金額で販売して、私から見ると「物件を卸した業者に騙されているな〜」というケースを多く目にします。そんな物件はなかなか売れず売れ残り物件となるため価格を徐々に下げ、業者の焦りが手に取るように分かります。
不動産の買取業務は大きな利益を得られる場合もありますが、一度の失敗で大きな損失となり可能性もあります。特に借入依存による買取業務は経験値の無さから失敗し、撤退する業者も多い様です。
また今まで買取業に専念して売主物件を供給していた不動産会社が、M&A等によって仲介業者をグループ会社化して専属仲介会社として運営することで仲介手数料をコストカットするパターンもよく見た一年でした。仲介業者に支払う仲介手数料をコストとみたんでしょうか、それだけ利益を得るのに必死なのでしょう。
また私は日々多くの不動産営業マンと話しますが、不動産に対しての知識も浅い人が多いと感じます。不動産にはリスクやそれにまつわるトラブルも多いため、お客様をはじめ自分自身を守るために知識を積み上げていくことは必須です。簡単に儲かる仕事と思うのは大間違いでしょう。
近年Youtubeでも情報発信をする不動産業者も増えてきました。その中にはあからさまなポジショントークや自社のサービスに誘導するためもの多くあります。しかし不動産業の実情や問題点を教えてくれるようなチャンネルもあり参考になります。
横浜にある賃貸メインの不動産屋の店長が配信しているチャンネル
Youtube
不動産業者はこのような情報を見ているエンドユーザーもいることを忘れてはいけません。
客は減っても価格は上がる
そんな不動産業界ですが、先にも書きましたが今後は住宅を購入するエンドユーザーは確実に減ります。物価高で所得も上がらない現状で家を買う人は減っているでしょう。しかし人気地域ではとんでもない価格で新築も中古も販売されています。
不動産というのが面白いのは『一人が買うと売れていく』というところです。どんなに高くても『欲しい』と思うお客様がいて買ってくれると成約に至るのです。物件が売れなくて不安で苦しい時期を過ごした業者もその苦しさを忘れ、新たな利益を夢見て新規物件を抱えるものです。また他業者がとても売れないと思われていた金額で物件を売却すると、同じ様な金額で売れることを夢見る…、それが不動産業者というものです。
「他の業者が儲かっているから自分も!」という心理は値付けに反映されます。以前から物件を探している人は価格の高さを分かりますが、今物件を探しはじめた人にはその価格が高いかどうか分からないのでノリや勢いで買う人も多いと思われます。このループが続くとなかなか値崩れはしていかないものです。
需要と供給によって不動産価格は決まりますので人気の場所は現在でも取り合いです。先般、会員様の内見に同行しましたが西区一番人気の立地にある築浅人気マンションだったため、1日のオープンハウスで10組の来訪、うち7組が買付という状況に驚きました。価格も分譲価格より1000万円近く高かったのですが、それでも近隣の相場に適した価格だったので売主様は先見の明があったということです。
ですがこれは「人気の立地」だから起こりうることなのです。
福岡都市圏でも広がる価格格差
ここ3〜4年、不動産市場はバブルでした。人気の場所だけでなく郊外の住宅地も価格が上がり続け、一昔前では考えられない様な金額で物件が売れていました。
ですが郊外は今年の頭頃から価格は下がりはじめ、現状は以前の価格に戻っています。ここで悲惨なのは高い時期に土地を仕入れ建物を建てて売るパワービルダーや中堅住宅メーカー、郊外にマンションを建てる地場デベロッパー等です。
土地の仕入れ価格も高い上に建築費も高騰しているため、物件は細切れにすることで総額を抑えていますが、郊外の物件が値崩れを始めている今、なかなか厳しいものがあります。
大手パワービルダーなどは企業規模も大きくマーケティングもされているため、損切りをしたり仕入れを調整したりしていますが、中小零細は今後、厳しい舵取りを強いられるでしょう。私もずっと物件情報を見ているから分かりますが、厳しい状況の地場メーカーや業者の名前が浮かびます。
とにかく不動産は立地です。
東京の現状と福岡の立ち位置
では福岡から離れて東京ではどうでしょうか?
下半期には東京での取引があり無事契約に至ったのですが、そこで買手側の仲介業者である大手不動産会社の営業マンと情報交換したところ、東京も物件の価格が上がりすぎて年収1,500万円位の人(パワーカップルが多いそうです)が購入するような物件が少なくなっていることのこと。そのため一般的な住宅系の仲介業者は苦戦しているとのことでした。
しかしその上をいく富裕層や外国人、特に中国人の富裕層相手の業者はとても儲かっているとのことです。そのような人たちは購入する物件は湾岸エリアのタワマンだったり、立地のいい高額物件だったりで、外国人相手の専門業者はツアーを組んで物件を紹介、時には電話一本の紹介でも買付が入るとのことです。
日本は不動産売買に関する規制がほぼ無いに等しく、多くの外国では認められない土地の所有権も取得することができるため、このように日本の国土が買われていることに疑問を抱きますが、利益を追い求める不動産業者にとってそのような問題は全く気にならないのでしょう。
世界の大都市のひとつである東京ですが、福岡は同様なことは一部で起きています。福岡は九州一の年でありアジアにも近く元気都市として評価も高まっています。都心部のマンションのグレードの高い部屋は外国人を含めた富裕層が購入し、投資目的の購入も増えているようです。
実際、公式HPでは完売になった新築マンションがすぐに空室のまま売りに出されます。気になったので謄本で所有者を確認すると不動産業者だったりメガ大家と言われる投資家だったりします。物件を早く完売させたいデベロッパーとその物件で儲けたい投資家や業者を繋ぐ仲介業者によって『新築ビジネス』も増えています。
ただそれは福岡の一部であり、全く流動化しない地域も多くあることを忘れてはいけません。
それでも未来は続いていく
このような現状を見ると、もはや不動産業界では住宅が欲しいエンドユーザーは置いてけぼりになっているように感じます。それでも不動産取引がなくなることは無く、数の比率から見ると一般庶民による不動産取引が多くを占めています。
今後の予測としては、これから団塊の世代が亡くなっていきます。現在、日本人が一年に約80万人亡くなっています。これは大阪堺市の人口は一年に消えているのです。それに伴い、相続不動産も増えていきます。一方、不動産を買う世代は減少の一途を辿っています。
だからこそ不動産業者は仕事に追われるだけではなく、不動産のプロとして知識を重ね時流を掴み、自分を信用して取引を任せてくれる顧客をパートナーシップを組むことで自分にしかできない取引を行える不動産業者になるべきです。
先のことは誰にも分かりません。悪いことばかりでないでしょう。来年は私は節目の年を迎えます。集大成として次なる10年を見据えて邁進する所存です。
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