増え続ける両手仲介
【両手仲介】について取り上げたこの記事はアクセスも多い人気記事です。2019年に作成した記事ですが、データやリンクをしている記事が更新されましたので、こちらも更新しました。
最初に取り上げた頃から5年経った2024年現在も【両手仲介】は増え続けています。宅建協会情報サイト『ふれんず』を見ても、一旦登録して登録証明書を取得後、物件情報を削除する【行方不明物件】は日々多く目にします。生き残りをかける業者の姿は今も変わらずの現状です。
不動産業者の現状
不動産業者は売主から売買を依頼されると基本的には物件情報をレインズに登録します。レインズとは数多くの不動産業者が加盟してできた不動産情報ネットワークを運営する公益法人が売主さんから預かった物件をより迅速に良い条件で探すシステムで平成2年5月に導入されました。
実は不動産業者の約84%が5人以下の中小零細企業です。
一般財団法人不動産適正取引推進機構
そのような不動産業者が収集できる物件情報は限られます。このレインズシステムの登場により、小さな不動産業者も大手不動産会社と同等の情報を得ることができたのです。私も所属している福岡県の不動産業者・約5,500社が加盟する福岡県宅地建物取引業協会には『ふれんず』という不動産情報サイトがあります。ここに物件情報を登録すると、自動的にレインズにも登録される仕組みになっています。
なぜ両手仲介をしたいのか
売主の希望は自分の物件を迅速かつ高値で売却したい、一方、買主は安く買いたい。これは当たり前の事ですが売主・買主の意向は利益相反となります。
この売主と買主をつなぐ仲介業者は、それぞれの希望を持つ売手買手を成約に向けて動きます。売り買い両者とも、仲介業者自身が見つけてくれば、それぞれ両方から手数料が取れる両手仲介となります。この両手仲介は業者にとって一つの仕事で2倍の手数料を得ることが出来るので美味しい仕事です。
しかし『ふれんず』『レインズ』は売主・買主にそれぞれ仲介業者がついて業者間での交渉をしながら仲介をする共同仲介が基本としています。そのため売主側の仲介業者に物件問い合わせをした業者を断わることはできません。つまり両手仲介はしにくくなるということです。
そこで共同仲介を基本としてない民間の物件情報サイトのSUUMO、アットホーム、ホームズ等やチラシ、新聞広告に物件を掲載する事で他社からの客付けを断り、自社で両手仲介を目指すのです。
民間の物件情報サイトは有料で掲載するのにもコストがかります。有料で安いとは言えない民間サイトへの情報料は巡り巡って一般ユーザーに転嫁される事になります。一方、ふれんずの物件掲載料は以下の通りで業者間情報は無料です。しかし業者に物件を紹介したくないために、共同仲介が基本のふれんず、レインズには物件を登録しない業者が増えています。
よく当社の会員様から民間の情報サイトに掲載している物件情報を見て問い合わせがあり、私が問い合わせをすると『不動産業者からの客付けはお断りしています』との返答をされることがあります。これはまさに両手狙いで業者都合のビジネスモデルなのです。
Forbes JAPAN記事
この業者都合の販売手法は果たして売主の望むことでしょうか?
売主さんがこの業者都合のビジネスモデルを理解していればいいのですが、インターネットを活用しない方や高齢者の方などは依頼した自分の物件がどのような状況で販売されているか、分からない方も多いのではないでしょうか。
また『よく分からない』『面倒くさい』ということで、本来の適正価格を示さない業者の言う事を鵜呑みにしてしまい販売を委託した後は丸投げをしている方も見受けられます。
大手不動産会社が安心という幻想
また昔から不動産業者はイメージが悪く『知らない不動産業者に相談するのは何だが不安』と思っている方もいます。また広告戦略などのイメージから『大手不動産会社は安心』という理由で、大手不動産会社のみに相談をされる方もいます。しかし、その認識は間違っています。
不動産業界は数字がモノをいう世界で、仲介は営業マンの個人プレーの側面が多い業務です。大手不動産会社とはいえ、不動産売買の結果は所属する営業マンの個人の資質とスキルに左右されます。実際に「週刊ダイヤモンド」のダイヤモンド不動産研究所の記事によると、大手不動産仲介会社は「両手取引」が蔓延している調査結果が掲載されいます。
ダイヤモンド不動産研究所
しかしちょっと言いたい。
上記記事は【物件囲い込み】や【両手仲介】に切り込んだ記事には間違いありませんが、注意すべき点もあります。それは記事中に『囲い込みを行わない不動産会社!』という項目で特定の不動産会社が紹介せれている、つまり広告も織り交ぜている点です。その点をはぶけば良文と言えるのですが残念です。
不動産業界の仕組みを知ろう
スムーズな物件売却や、欲しい条件の物件を多くの情報から探すことができる物件購入には、適切な物件流通の仕組みとルールが必要です。このままでは民間サイトに物件が流れ、本来物件が一番集まるレインズ(ふれんず)に物件が集まらない状況は看過出来ません。
売主・買主にとって大切な資産である不動産。『高く売りたい』『安く買いたい』を実現させるためには、不動産業界の仕組みを知ることが大切です。