優良物件購入のライバルが不動産業者である理由
私は毎日ほぼ欠かさず福岡宅建協会の不動産情報【ふれんず】に新規登録される物件をチェックして不動産市場の動向を確認しています。これをすることで物件や最近の業者の動向が手に取るように分かります。また毎日の物件チェックは当社人気のコンテンツ【パトふれくん】の元ネタでもあります。
【パトふれくん】がスタートしたのは2019年6月13日。当初は【新着くん】という名前で配信していましたが、毎日チェックしていく中で良い物件として気になるものが実はとても少ないことに気付きました。
一方、新規登録をして物件情報に『NEW!』マークが付くことに拘るバカな業者が、登録と削除を繰り返して同じ物件を何度も何度も姑息な登録を繰り返しているなど、違った意味で気になる物件が多いことを知りました。そこで名前をパトロールふれんず=【パトふれくん】に変えることにしました。
姑息な物件登録は逐一宅建協会に報告をし続け、行儀の悪い業者はだいぶん駆逐しました。しかし手を緩めるとすぐに悪いことをする業者が湧いてきます。詳しくは『新着くん誕生!に至るまで』の内容をチェックしてみてください。
このように日々100件近く【ふれんず】に登録された新規物件のチェックを続けていますが、これによって不動産売買の流れと、業者の薄い販売戦略がはっきりと分かるようになりました。
その中で目立つのが、近年増加している買取転売業者です。実は買取業者が増えることで、一般エンドユーザーは安値で良い物件を購入しづらくなっています。今回はその理由をお伝えします。
レベルが高い福岡の物件情報システム【ふれんず】
福岡県宅建協会は全国の宅建協会の中でもレベルの高い情報システムサイト【ふれんず】を運用しています。この【ふれんず】には一般の方が目にする情報の他に、不動産業者のみが利用できる会員間情報サイト【ふれんずBtoB】もあり、宅建協会に加入している不動産業者は物件情報の取得や販売ツールとして日々活用しています。
また当社の会員様には物件探しの基本は【ふれんず】とお伝えしており、ご自身の探している地域を【ふれんず】のシステムである【MYふれんず】に登録してもらい、物件の動きと相場観を身に付けていただいています。物件探しのベースは宅建協会が運営している【ふれんず】をオススメしているのです。
またちょっと前ですが、Youtubeを見ていたら、TV等で不動産関連のコメンテーター等で活躍中の長嶋修氏のチャンネルで【ふれんずBtoB】はレベルが高いと言っていました。そのくらい福岡の業者間情報はレベルが高いものとなっています。
このように首都圏の不動産関係者からも評価が高い【ふれんず】システム。福岡宅建協会に所属する業者はこの恩恵を受けていると言えるでしょう。
実はこの【ふれんず】、実は買取業者にとって商品仕入れの場でもあるのです。
業者は買取物件も【ふれんず】で探してる
私は30年以上も前から買取転売事業を行っています。4~5年前までは【ふれんず】には買取に値するような安値の物件も登録されていたため【ふれんず】からも多くの買取物件を仕入れていました。
しかしここ最近、買取に値する割安な物件を目にすることは少なくなってきました。その理由のひとつは買取業者の増加と、安い物件の仲介を委託された仲介業者が物件を市場に出すことなく、買取業者に情報を持って行くことが増えたためです。
更に深く物件情報を見ていると、そこまで安値でもない、そして以前売れた(成約した)と思われた物件が、一定期間をおいてリフォームを施され売主物件として再販されているパターンが増えてきているのです。
仕入れ値はそこまで安くないのに、買取業者がそれを買取りリフォームを施して再販するため、かなり高値の物件として販売されています。そのため一般エンドユーザーはなかなか手を出せず、徐々に値段が下がりやっと売れていく…そんな状況が見受けられます。
それでも1人のお客様が物件を購入することで売却は成功となります。買取業者の心情としては、販売物件がなかなか売れない時は不安だったでしょうが、売れてしまうとその不安だった頃のことは忘れ、新たなる買取物件を求めて探し続ける…、これが不動産業者なのです。
このように一般不動産市場も多くの業者が買取物件を探す場となったため、一般エンドユーザーは安値で手頃な物件が少なく感じているようです。
仲介業者にとって魅力ある【ダブルの両手仲介】
【ふれんず】で買取物件を探す業者は増える一方ですが、【ふれんず】だけでなく仲介業者も馴染みの買取業者に物件情報を持ち込みます。
もちろん昔から仲介業者が安い物件の情報を、買取業者に持ち込むことはありました。ただ以前は買取業者が極端に少なかったため、買取業者に縁のない業者は【ふれんず】に物件を掲載して仲介をしていました。
仲介業者が買取業者に物件を持ち込むのには理由があります。仲介業者は買取業者に物件を売ることで、安値で物件を売る売主と買取業者の両方から仲介手数料を得ることができ【両手仲介】の取引となります。
●買取再販業者に仲介することで1回目の仲介手数料をGET
その買取業者が物件を商品化して販売するときに、買取物件を持ってきてくれたお礼として仲介業者に専任で物件の販売を任せることが多く、その仲介業者は再度【両手仲介】のチャンスを得ることができます。このことを私は『ご褒美仲介』と命名しています。
●ご褒美仲介によって2回目の仲介手数料をGET
仲介業者にとって1つの物件でダブルの仲介手数料を得られる物件は、効率よく利益を得られる魅力的な仕事です。一方、買取業者にとっても割安で仕入れた物件にリフォームやリノベーションを施し利益を乗せて市場で売ることで、高い収益を得ることができるため、お互いにとってウィンウィンの仕事となります。
ここで一番損をするのは、仲介で売ればもっと高く売れるはずの物件を、何も知らないまま安値で売ってしまった売主ということになります。
もちろん買取が全て悪いわけではありません。『現金化を急いでいる』『事故物件など事情がある物件』『業者が手をかけなくては商品化できない物件』など、業者に買い取られることがベストな場合もあるのです。
なぜ買取業者が増えているのか
ではなぜ買取業者が増えたのでしょうか?
堤エステートが買取をはじめた30年前頃は、ごく一部の業者しか買取転売を行っていませんでした。10年前もまだまだ少数でしたが、ここ近年は経験値の浅い業者でも買取転売を行っています。それは金融機関が不動産業向けの融資を増加し続けているからです。
ニッセイ基礎研究所のデータによると『異次元緩和導入前の2013年3月末を起点にした場合、直近3月末にかけて30%(29兆円)も増加している』とのデータが公開されています。
ニッセイ基礎研究所
この背景から多くの業者が自社で買取転売することで、仲介手数料とは比較にならない売上げとなることを知り、金融機関の融資を元手に猫も杓子も買取転売に参入しました。これは現在の不動産売買業のビジネスモデルにひとつになっています。
なぜ買取業者が増えるとエンドユーザーは安い物件が買えないのか
買取業者はエンドユーザーと違い、買取資金を準備しているので、いい物件が出るとすぐに物件を買い取ることができます。そのため良質で割安な物件は一般市場に出てもすぐに業者によって買取られてしまいます。
もちろん買取転売には大きなリスクが伴います。仲介は手数料商売なのでリスクは少なくなりますが、買取物件は失敗をすると大きな痛手を被ります。
経験値の浅い業者の中には、仕入れた物件が売れずに苦労しているのを見かけます。買取に参入しても結局は撤退する業者も多く目にしてきました。不動産業は勢いだけではできません。物件と価格の目利きは求められる世界なのです。
だからこそここ最近、私は会員様に『安値で良い物件を購入するためのライバルは業者である!』とお伝えしています。
ですがこの状況にも限界があります。あまりにも業者の数が増えすぎているのです。日本は少子高齢化の問題が目前に控えています。不動産を購入する人は年々先細り、需要と供給のバランスは崩れてきます。東京などの大都市ではまだ取引は活発でしょうが、既に地方では不動産取引は減少しています。
今後、不動産業者は淘汰されていくでしょう。
いい物件を取得するためのライバルである業者に勝つためにも、資金計画を固め、常に物件情報に目を光らせる!この努力を重ねることが成功への秘訣です。