時事放談の新しい記事を書くためにいろいろなデータを調査していたところ、ふと『福岡の県民所得は今どれくらいなんだろう?』と思い調べてみることにしました。
県民所得については、昔から私がお客様や会員様に不動産を取り巻く様々な話しをする際にお伝えする内容です。私は不動産について説明をする際に、経済や金融の話しも織り交ぜます。なぜなら不動産だけ知っていても市況や市場は分からないからです。
その中の話題のひとつとして「実は福岡県民の県民所得は意外と低く、広島より低いんですよ。」と言うと、ほとんどの方が驚かれます。なぜ広島が福岡より高いかと言うと、広島には自動車メーカーのマツダがあるからなんですが、皆様「なるほど~」と頷かれます。
その県民所得、長らく最新のデータを調べていなかったので、『今現在はどうなっているのだろう?』と思い改めて調べてみることに、するととんでもないことになっていました…!
驚いた福岡県の県民所得のランキング
県民所得のデータ元は内閣府の県民経済計算から抽出しました。最新データとは言え令和3年度なので少し前ですが『1人当たりの県民所得』として算出されたものを高い順に並び替えてみたところ…
なんと47都道府県中37位!!
数年前に私が見た時は真ん中位と記憶しており、その時も『福岡って意外と低い…』と思ったものでしたが、まさかの37位とは…。詳しく見ていくと福岡県は熊本県や大分県、佐賀県よりも低くなっています。
県民所得の定義を調べると『県民や県内企業等が得た所得の合計を県の総人口で割ったもので、個人の給与水準だけではなく、企業の利潤も含んだ各エリアの経済的な豊かさを表す指標の一つ』のため、単純に個人の経済的な豊かさを計るものではないでしょう。
上記の定義から考えると、例えば熊本県は菊陽町にTSMC等の半導体の工場が集積しており大分県にも大企業の工場が集まっているので、人口の多い福岡県よりランクが高くなるのは深く調べると頷けます。
それでも37位とは…、なんだかショックです。
都道府県別人口ランキングで福岡は何位?
県民所得を探究するうえで人口は重要です。都道府県別の人口ランキングも調べてみました。データ元は総務省統計局の各年10月1日現在人口の都道府県別最新データです。
それによると47都道府県中、福岡県は8位。九州では一番です。
福岡は大きな産業がなく支店経済都市と言われるため、この数値をみると先に記載した県民所得の定義から福岡の県民所得が低くなってしまうことが分かります。
政令指定都市別人口ランキングの福岡市は何位?
福岡県には60の市町村があり地理的、歴史的、経済的特性棟から北九州・福岡・筑豊・筑後の4地域に分かれていますが、それぞれ人口や経済動向には差があります。そのため福岡市のデータを調べないと正確な不動産市場の姿が見えないため、東京23区と全国に20ヶ所ある政令指定都市での人口ランキングを調査してみました。
それによると福岡市は21都市で6位と、九州の中では断トツの人口ということが分かります。
日本で一番人口が多い都市は東京23区の987万人(2024年10月時点)となり、福岡市の約6倍の人口がいます。確かに東京に行った後、福岡に戻ると福岡の街中の人の少なさを実感するものです。
この福岡市の人口は居住用として不動産を売買(もしくは賃貸)する人のターゲット層となりますので重要です。
政令指定都市の家計調査で福岡市は何位?
では福岡市の人々の家計はどうなっているのでしょうか?これもいろいろ調べつつ比較すると、一番参考になるのは大都市比較統計年表というデータと感じたのでそこからデータを抽出、ランキングを作成してみました。
大都市比較統計年表は、大都市(政令指定都市・東京都区部)の市勢及び行政の基本的な統計資料を相互に比較することを目的とし、大都市統計協議会(※政令指定都市の統計主管課と東京都の統計主管部(課)をもって構成されている組織)で毎年編集している冊子です….
横浜市
福岡市は21都市中16位、急にランクが下がってしまいました。これを見ると「福岡市民はあまり経済的に余裕はないのかな…?」と思ってしまいます。
ただデータ内容を詳しくみると集計世帯数が少なく感じます。なので一概に鵜呑みにはできませんが、世帯主の年齢は子供の教育費等で一番お金がいるとされる年齢層に絞ってあります。総務省統計局のデータなので、もう少し大規模な世帯数で算出すればいいとも思いますが、現段階で公なデータによる調査としてピックアップしました。
都道府県別の経済的豊かさランキングを確認
何か他にもデータがないか探したところ、国土交通省が令和3年3月8日に行った国土審議会計画推進部会・国土の長期展望専門委員会の参考資料を見つけました。
国土交通省
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このデータは都道府県別になっていますが、やはり福岡県のランキングは32位から36位辺りとなっているようです。福岡地域以外の北九州・筑豊・筑後もデータに加わるので、やはりランキングは下がってしまうようです。
詳しい資料は下記リンクからご覧ください。
国土交通省|国土審議会計画推進部会・国土の長期展望専門委員会|参考資料
国土交通省|国土審議会計画推進部会・国土の長期展望専門委員会|参考資料
暮らしにまつわるお金の面で考えると、福岡は思ったほど豊かではないように感じてしまいます。
福岡県の不動産業者数を見てみる
それではここで都道府県別の宅建業者(不動産業者)の数を見てみましょう。データは不動産適正取引推進機構の統計概要から抽出しました。
福岡県の不動産業者の数は全国6位、かなり多いことが分かります。そのため顧客獲得の競争は厳しいものがあります。
国土交通省|国土審議会計画推進部会・国土の長期展望専門委員会|参考資料
データをみて思うこと
きっかけは県民所得の全国ランキングの低さに驚いたことでした。そこからいろいろなデータを調べて思ったことは福岡県民や市民はイメージより豊かではないということです。
改めてデータを見直すと以下の福岡の課題が見えてきます
人口減少と高齢化の課題
今後、日本の人口減少は加速します。その中でも福岡は全国的に見ても人口の多い地域であり、都市としての発展が進んでいますが、全国的な人口の減少と高齢化の波から逃れることは難しい状況です。 今後、地域経済や不動産市場においても、少子高齢化の影響が徐々に表れる可能性があります。
また福岡の人口比率は女性が多く、今後の不動産市場にとって顧客を探すのは難しくなってきます。
支店経済の限界と地域産業の多様性
福岡は『支店経済都市』として成長してきましたが、外部に依存する産業構造では、景気変動や企業動向に大きく左右されるというリスクがあります。 今後、地元産業の多様化や新規事業の育成がなければ、経済の安定性を欠く可能性もあります。
観光産業の課題
福岡はアジアに近いため観光業にも期待が寄せられますが、他の観光都市に比べて観光名所が少なく、観光客の数も限られています。観光資源の充実や魅力的なものイベントの企画全体、観光誘致のための基盤強化が急務です。
長い目線での不動産市場はどうなる?
不動産市場に目を向けると物件を購入する人は確実に減ります。また多死社会に突入しているため相続物件は増加するでしょうが、物件を売りに出しても買う人がいなければ取引はまとまりません。
増えすぎた不動産業者を賄うほど不動産の取引件数も見込めない中、既に不動産は行き渡っており人気物件とそうでない売れ残る物件の差は顕著です。
人気の地域は物件価格が高騰しているなか、日々の暮らしに追われる一般庶民は住まいを購入するのが難しくなっています。
そのような未来が予測される中『元気都市福岡』のイメージは根強く、外国人や投資家等に対してデベロッパーや不動産業者の営業トークとしてよく言われるのが人口増加率・事業開業率・地価上昇の高さ・成長都市という部分です。しかし営業される側はその内容を深く確認して検証して欲しいものです。
高所得者も存在しますが福岡でその数は圧倒的に少数で、近年「いったい誰が買うのか?」と首をひねりたくなるような高額な物件も目にします。東京と違い福岡ではなかなか売れないはずです。
不動産業者に伝えたい
福岡は街もコンパクトで自然豊かな場所にも気軽に行ける立地、物価も安くて美味しいものが多いため住みやすい街だとは私も自信を持って言えます。地理的にもアジアの玄関口としてポテンシャルも高いとは感じますが、他の観光都市に比べて観光名所が少なく、観光客の数も限られています。
それでも九州の他県と比べると人口も産業も多い福岡は不動産業にとってまだまだチャンスを感じられます。だからこそ冷静に福岡の立ち位置を見つめ、ただお客に売るだけではない、一歩先を行く不動産業に取り組む必要があります。
不動産業の変化はもう起こっています。堤エステートのHPは多くの業者の方も見ているようですが、以前に比べてお問合せの数は減っていませんか?オープンハウスや物件チラシをしても手ごたえを感じていますか?同じことを繰り返していてもビジネスは先細りするだけです。
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