最初はセカンドオピニオンの依頼
2009年1月、年も明けてそろそろお正月気分も抜けてくる頃、堤エステートのホームページから1件のお問合せがありました。
お問合せ内容は不動産セカンドオピニオンの申込みです。このサービスは、不動産に関する不安や疑問、悩みを第三者の立場から意見を言うサービスです。あくまでも意見を言うだけで営業活動は行いません。内容を見ると購入予定の不動産物件について相談したいとのことです。まずは話を聞いてみることにしました。
お越しいただいたのは、A様という40歳代の上品な雰囲気の奥様です。お話を聞くと、1件の物件を購入しようとしています。現在のお住まいは、東区でも便利な地区の持ち家です。場所に不満はありませんが、とにかく古くて狭いので住み替えをしたいとのこと。物件を見て気に入ったので、購入の話を進めているのですが、ふと自分にとって本当にいい物件なのか?と気になったそうです。
そこでインターネットでいろいろ検索してみると、プロの不動産業者が客観的な意見を述べてくれる、堤エステートのセカンドオピニオンにたどり着いたので、聞いてみることにしたのでした。
物件の資料を見せてもらうと、業者名を見るとK建設、私は知らない業者です。A様が営業マンから聞いたところによると、この物件は競売にかかる予定の任意売却物件で、決済を急がないと競売になってしまうとのこと。だから早く契約をしたほうがいいと言われていたのです。インターネットの競売情報で調べてみると、確かに競売に公告されています。
A様のご希望は、建物は現在のお住まいより広く車を2台駐車できることが必須条件でした。案内をした営業マンによると、工事をすれば2台駐車できるようになるとのこと。しかし写真を見る限りでは、高低差のある敷地いっぱいに建物が建っており車庫は堀車庫です。これで営業マンが言うような工事ができるのか疑問に思いました。
またA様に内覧時の建物や室内の状態を聞いてみると「室内には荷物がたくさんあって、よく分かりませんでした…。」とのこと。建物のクラックや地震の被害、水回りの状態などを聞いても、よく分かっていませんでした。
この様子を聞くと、営業マンは内覧の際に細かい物件の説明をしていないようです。A様は一般のお客様です。まだ所有者も居住している状態の初めて見る物件で、建物のチェックポイントなど分かるはずがありません。改装費用やその他の工事費用も、口頭による概算で、見積もりを出してもらったわけでもありません。また私はA様の希望されるグレードのリフォームは、営業マンが口頭で提案する金額では、実現が難しいのではないかと考えました。これらA様からのお話と、机上の調査だけでは詳しいことは分かりません。営業マンから決断を急かされているA様は焦っていました。
「とにかく一度、現地を見てみましょう。そこでまた、検証してみます。」
現地調査で分かること
数日後、私は現地調査を行いました。実際に見てみると、建物にはクラックなどが多く見られ、ごれらにかかる工事費用は、とうてい口頭で言われた工事費用では厳しいと思われました。
また車庫工事の件もあるので、土木のプロに見てもらい見積りを出したほうが良いと思ったので、取引先のリフォーム会社数社に現地調査を依頼しました。れました。
その内1社のリフォーム会社社長より報告がありました。それによると敷地いっぱいに建物が建っているために、わずかな敷地を削って無理に駐車スペースを造るのは建物自体が崩壊の恐れ、つまり山崩しのような状態になるだろう、とのことでした。私の予想は当たっていました。
後日、A様がご来社され調査結果を報告しました。「駐車場が1台でも良いお客様にとっては、それなりにいい物件かもしれません。でも駐車場を2台停めることが必須条件のA様にとって、最適な物件ではありませんでした。A様がご希望されるリフォーム内容では、この物件では予算内での物件取得は厳しいと思われます。」
さらに「夜は人通りの少ない地域なので、お子様であるお二人のお嬢様にとってあまりいい環境とは思えません。」なぜそのように言ったかというと、この場所は創業地のそばであり、以前、近隣の土地取引を数件を行っていたため、周囲の環境や相場感もよく知っていたのです。
私の気持ちを正直に伝えると、A様は言われました。「ありがとうございます。私も踏ん切りがつきました。あの物件の購入は止めます。」
A様は家を探し始めたばかり。まだあまり物件を見ていません。正直予算から見ても、もっと資産価値の高い最適な物件はたくさんあると感じたので私の意見を正直に言った後は、インターネットを使った物件の見方などをレクチャーしました。
すると、A様はとても興味を持たれ、メモをとりながら質問をされます。そうしてこう言われました。「堤社長が言われるように、私も勉強して物件を見る目を養いながら自分で探してみます!」
競売になった物件は、任意売却より安値で落札
A様が購入を止めた物件ですが、結局は競売になりました。私も試しに入札をしてみました。結果は7票入札で、落札金額は1,158万円。A様が購入されようとしていた金額は、1,390万円だったので、競売市場で入札したほうがメリットのある物件でした。
ちなみに私は3番手…、落札金額との差は約44万円でした。
売却基準価額 | 7,811,000円 |
入札総数 | 7票 |
入札金額 | 入札者名 | |
1 | 11,580,600円 | (有)**** |
2 | 11,568,000円 | (株)******** |
3 | 11,139,000円 | ツツミ タケオ |
4 | 11,100,000円 | *********(株) |
住まい探しにかける情熱はピカイチ!
その後A様は、当社の会員登録をご希望いただきました。セカンドオピニオンから、当社のサービスを気に入っていただいて入会をいただくのは、うれしいことです。またこれで、競売市場や任意売却による物件取得も視野に入れることができます。
それからA様の物件探しが始まります。毎日インターネットの様々な物件情報を確認して気になる物件があったら、当社にご連絡をいただきます。当社では、A様の見ている物件情報のURLを送ってもらい、堤エステートからその業者に問合せをします。資料を取得したら、A様にメールやFAXで送り、その資料を基にA様はご自身で、現地調査を行います。
A様はエネルギッシュでフットワークの軽い方、どんどん物件を探されます。また、私の教えを忠実に実践し、ご自身で近所の方にも積極的に声をかけ地域のことやご近所のことを聞いてみます。自分が住む住まいは自分の足で調査をする、このことはとても重要なことです。昼間だけでなく、夜の様子なども確認することも大事です。A様は積極的に物件調査を行っていました。
物件探しの当初は、問い合わせをいただく物件も、間取や価格に引かれたものでした。しかし、いろいろな視点で見ると、机上でも価格が釣り合ってないものや問題がある物件と分かるものもあります。その都度アドバイスをしてダメな理由もお教えするとどんどん物件を見る目が養われてきます。
しかし、たくさんの物件を見すぎたA様。少し疲れがでてきたようです。急いで物件を買わなくてはいけないわけではないので、少しペースを落としては?とお伝えすると、少し気が楽になったようでした。
そしてA様が会員登録して1年が過ぎました。なかなかまだ思うような物件に巡り合えません。しかしねばり強いA様は、もう1年会員を更新したいと言っていただきました。また新たなスタートです。その頃にはA様のご主人ともお会いしていて、ご主人の希望や資金計画、今後のライフプランなどもお話をしていました。とても人のいいご主人は、私に会っていただくことで安心されたようです。
「堤社長、これからもよろしくお願いいたします!」
ピッタリな物件はある日突然に…
ある日のこと、またA様から物件の問合せが入りました。「どれどれ…。」見てみると O-uccino(オウチーノ)というサイト。私、こんなサイト知りませんでした。お客様の中で熱心な方は、私たち業者より本当に物件情報を見ています。「よくこんな物件見つけてきたなー。」という物件も多々あります。この物件は、結構大きな物件の割には価格も手頃、場所も人気のある地域です。
一般媒介のようなので、いつものふれんずでチェックしてみました。すると…、大手不動産会社FCの不動産会社が220万円も高い金額で情報を出しています。「もしかしてこれ…。」私はピンときました。
「この物件、また任売物件じゃないかな?」
荒れる任意売却の現場
ふれんずを見ると、大手不動産会社FCも一般媒介のようです。一般媒介なら売主との交渉も可能です。早速、法務局で所有者を調べ、所有者の方に連絡を取らせていただきました。謄本をみると分かるのですが債権額等から考えると、やはりこの物件は任売物件のようでした。220万円も安く情報を出していた業者と価格差が気になりましたがまずは所有者の方にお会いして、このことも聞いてみよう…と思ったのです。。
所有者はご両親から物件を相続された女性の方でしたが、実際に物件を管理していたのは、同居をされていたI様でした。大きな住まいは、お父様の代に建てられたもので仕様も立派です。早速、この物件を気になっているお客様がいること、私も不良債権処理を行いI様達にとって最良の提案をできると思うので、売却活動をさせてもらえないか…という話をさせてもらいました。
するとI様は、大手不動産会社FCに売却を依頼しているが、全く動きがないとのこと。不安が募るのでお客様が付くのであれば、話を進めたいと言っていただきました。そしてA様の内覧日と次の打ち合わせ日を設定しました。それから気になっていた、220万円も安く物件情報を出していた業者のことを聞くと…I様はいいました。
「私、そんな業者会ったこともないし、知りません。」
不良債権不動産の売却活動をするには、売主の同意が必須です。販売している金額で債権者が同意しているのか、その確認をしておかないと購入を希望されるお客様が出たものの、売主や債権者が同意せず、結局その物件は売れないのです。
しかし近年、物件数の減少により不良債権処理をしたことのない不動産業者の参入が増えてきました。そのために購入希望のお客様が付いても、売主との話がついていないため、話を進めることさえもできないケースがあるのです。
I様の言葉に驚いた私は、その場でその業者に連絡してみることにしました。まず、私がその物件の問合せということで電話をし、続けて「この物件、任売ですよね?売主さんとお話は済んでいるんですか?」電話の向こうで、その業者はとても歯切れの悪い返事をします。するとすかさずI様が電話に出て言いました。
「私、物件の売主ですが、お宅は誰ですか?なぜ私の物件を勝手に売っているのですか?!」
I様の言葉に驚いた私は業者はびっくりしたのでしょう。わけの分からないことを言って、電話を切ってしまいました。恐らくその業者は、債権者に張り付いている不動産業者で、債権者よりこの物件の話を聞き、まずは物件情報を出しておいて、お客様がついてから売主に交渉をしに行けばいい…という考えだったのではないでしょうか。しかしそれは不良債権処理でも任意売却でもありません。こんな市場を荒らし、所有者やお客様を惑わせる業者は、退場すべきと思います。
物件の取り合い?慌てる業者
まずはA様に物件を見てもらいます。実は、私ちょっと気になることがありました。それはA様のご家族に対してこの物件は広すぎるのではないか…、ということ。
物件の仕様や資産価値は申し分ないのですが、この物件は二世帯住宅になっています。しかしA様のご家族は、普段の生活はご主人とA様のお二人のみ。進学のため家を離れているお嬢様が2人いらっしゃいますが、日常はお二人のみの世帯にはとても広すぎるのではないか、心配になりました。
しかしA様ご夫妻は物件を見て気に入ってくださいました。広さのことをお伝えすると「大は小を兼ねると言いますので!」と言われます。実は行動的なA様はこの物件を検討する際に、カリスマインテリアコーディネーターの方に間取を携えて、意見を聞きに行っていたのです。そこでその方から太鼓判を押されていたのでした。A様の行動力には頭が下がります。
物件も気に入られたので、いよいよ取得のために債権者との交渉に入ります。その時です。今まで全く動きのなかった大手不動産会社FCの営業マンが私の動きに気づいたのです。そこで慌てて以前の顧客を掘り起こし、案内をして購入のための動きを始めたのです。I様は困ってしまいました。I様の本音は、少しでも高く売って手元にお金が残るようにしたいということ。
私は今までI様達の不安にも気づかず放置をしていたのに他の業者(私です)がお客様を連れてきたとたんにバタバタと動き出し契約につなげようとする、その根性が気に入りません。以前のお客様を掘り起こすことで、物件が売却できるのであればI様達のことを考えると、一刻も早くそうするべきではなかったのではないでしょうか!
私はやっとこれぞという物件に巡り合われたA様のためと少しでもI様達に有利になるような交渉を行おうと決めました。幸いI様がA様にお会いして、とてもA様を気に入っていただきました。
I様にとってお父様が建てられた大切な家族の思い出が詰まったこの住まいを手放すのは辛いことです。せめて、大切に扱ってくれる人に住んで欲しいな…という気持ちも分かります。そのためにも交渉を慎重に進めていきながら、紆余曲折を経て、約4ヵ月後に無事決済の運びとなりました。
当社のサービスをフル活用された会員様
A様は結果的に、堤エステートの多くのサービスをご利用いただきました。
セカンドオピニオン |
セルフ型仲介 |
任意売却 |
仲介手数料割引サービス |
堤エステートの会員制 |
現在、A様は新しいお住まいで生活をスタートされています。そしてありがたいことに今度は、別件の土地の売却をご依頼いただいております。
様々なドラマがあったこの案件。所有者の方のフォローもしながら、無事物件が購入できるようライバル会社の動きも見ながら交渉を進めてもいきました。交渉が停滞し動きが取れない中、A様にはお待ちいただいた時期もありました。こんなことができるのは、信頼関係を結び、お客様の内容を分かっている会員様だからできたケースともいえます。
これからも様々な会員様やお客様とお会いできることを楽しみしています
- 顧客概要
- 40代女性の会員様
- 取引日
- 平成22年7月
- 概要
- 不動産を学びながら理想の物件にたどり着くまで