不動産売却|あなたの物件、囲い込まれていませんか?
今回の不動産時事放談は、不動産売却についてのポイントを数回に分けてお届けします。まず最初は不動産業者の業者間情報であるレインズ(ふれんず会員間情報)とそこに掲載する意義を説明します。大切な資産である不動産を売却する際の参考になれば幸いです。
レインズとは
所有者である売主は不動産売却を行うために、まずは売却を依頼する不動産会社と【媒介契約】を結びます。
西日本不動産流通機構|西日本レインズ
媒介契約の種類については後に更新する記事でまた詳しく説明したいと思いますが、3種類ある媒介契約の中で【専属専任】と【専任】で媒介契約を締結した際は、指定流通機構(レインズ)への登録と登録証明書の発行が義務付けられています。
この指定流通機構|レインズ(REINZ)は、宅地建物取引業法に基づき、国土交通大臣の指定を受けた全国で4つの公益社団法人や公益財団法人によって運営されています。
西日本不動産流通機構|西日本レインズ
不動産を購入したい一般エンドユーザーの方が目にする物件情報サイトは、宅建協会等の不動産業界団体の運営するもの(福岡だとふれんず等)と、民間企業が運営するもの(SUUMOやathome等)がありますが、レインズ/REINSは業者間情報のため、一般の方は見ることができません。
ここ福岡は西日本不動産流通機構(西日本レインズ)に属しており、ここに物件情報を登録することで全国の不動産業者に対して物件をアピールすることができます。
また当社が所属している福岡県宅地建物取引業協会は【ふれんず】という県下最大の不動産ポータルサイトを運営しています。【ふれんず】にもレインズと同じような業者間情報である【ふれんずBtoB・会員間情報サイト】があり、私たち業者はお客様に提案をする物件の多くを【ふれんずBtoB・会員間情報】で探しています。
★左がレインズ(REINS)、右がふれんずBtoB・会員間情報のTOPページ
福岡は宅建協会に属している不動産業者が約8割(令和5年5月30日現在)となっており、業者にとっても効率よく物件情報を探したり掲載したりできる【ふれんずBtoB・会員間情報】は最適です。
公益社団法人 福岡県宅地建物取引業協会
当社人気コンテンツである【パトふれくん】も【ふれんず】に登録された新規登録物件をピックアップをしています。
レインズ(ふれんずBtoB)に掲載するべき理由
先程も記載しましたが、売却を依頼するとき媒介契約を【専属専任】や【専任】で結んだときは、レインズやふれんずの業者間情報に登録する義務があります。
なぜレインズ(ふれんずBtoB)に登録しなくてはいけないのでしょうか?それは買いたいお客様を募る窓口を増やすためです。
不動産業者1社で集客できる数には限りがありますが、他業者の顧客の中には希望条件に合うお客様がいるかもしれません。業者間情報に掲載すると、多くの不動産業者に対して物件をアピールすることができ、売りたい人と買いたい人を繋げる可能性が高くなるのです。
●1社の不動産屋で集客できる数には限りがある
●レインズに登録すると買い客を募る窓口が増える
このような売り手側と買い手側に不動産会社が1社ずつ入り仲介する取引方法を【共同仲介】といいます。不動産情報を業者間で流通させ【共同仲介】をしていくことで不動産の流動性は高まります。このことは不動産業の監督官庁である国土交通省も推進しています。
下記リンクは不動産情報サイトathomeの「共同仲介」についてのコラムです。このコラムの下の方に「仲介手数料と注意点」という部分に【囲い込み】や【売り止め】の問題点、「『売却コスト』よりも大切なこと」という部分に仲介で大事なことを記載してあります。もっとこの部分は大々的にアピールすべき点と思います。
athome
不動産業者の利益である仲介手数料は成功報酬です。取引を成立させるためには、売主側の業者は多くの買い客を募るために業者間情報に登録をして、買主側の業者は購入希望のお客様に合う物件を探さなくてはいけません。そのためにも不動産業者は協力をし合っている側面があります。
なぜレインズ(ふれんずBtoB)に掲載しないのか?
レインズ(ふれんずBtoB)に物件情報を登録することで、多くの買い客を募ることができますが、売却を依頼された物件の情報を業者間情報に登録しない業者も見受けられます。それは【他の業者に買い客を見つけられたくない】からです。
しかし売主側の業者が自社で買い客を見つけると、その仲介業者は売主からも買主からも仲介手数料を得ることができ、効率よく稼ぐことができます。これを不動産業界では【両手仲介】と呼んでいます。
この【両手仲介】を狙って『効率よく稼ぎたい』と思う業者は、他の業者が物件を紹介できないように業者間情報には登録をせず、自社だけで買い客を募るのです。業者間情報に登録されない物件は買い客を募る窓口は狭まり、チャンスを逃してしまいます。
一例として、会員制で運営している当社の会員様は、ご自身で物件情報から気になる物件を探され、当社に物件問合せを依頼してきます。その中で【ふれんず】には掲載されていない、でもSUUMOやathomeには登録されている物件がまあまあの頻度であります。
その際、会員様の仲介業者として情報掲載業者に問合せをすると『業者への紹介お断り』や『申込が入ったので紹介不可』と言われたことが何度もあります。その業者は買い客の問合せしか受け付けないのです。このようなことは多くの業者が経験しています。これは近年、不動産業界でも問題視されている【物件囲い込み】という名前で呼ばれています。
せっかくの問合せを断っていることを売主は知っているのでしょうか?
レインズに登録すると登録証明書がでる
また【専属】【専任】で売却依頼を受けている場合には、業者間情報であるレインズに登録をして、売主に対し業者間情報に登録したという【登録証明書】というのを発行・提示しなくてはいけません。この【登録証明書】はレインズに登録するとその都度1度だけ取得ができるものです。
しかし姑息な業者もいて、【登録証明書】を取得するためだけにレインズに登録して、取得後には即座に物件情報を削除するような不届き者もいるのです。
媒介契約には業者間情報に登録義務がある【専属】【専任】の他に【一般】という種類もあります。この【一般媒介】には業者間情報への掲載が義務付けられていません。しかし【一般】でも業者間情報に登録をしている業者もたくさんいます。この辺りの姿勢をみると、その業者のモラルが推し量られます。
私は毎日【パトふれくん】更新のためにふれんずの新規登録物件をチェックしていますが、その中で登録されたはずの物件情報が翌日には消えている場合があります。
もちろんすぐに売れた場合もあるでしょうが、一旦業者間情報に登録をして即座に消された物件も多いと感じています。当社ではこのような物件を【行方不明物件】と呼んでいます。
売却を依頼した売主は、できるだけ早期に高い金額で売却したいはずです。売主が知らないのをいいことに、業者都合の手法で利益を得ようとしている不動産業者がいることも知るべきでしょう。
売主でもチェックできる
このような業者都合の取引にならない為にも、一般エンドユーザーである売主も不動産業界について知識を得て理論武装しなくてはいけません。
例えば不動産業者しか情報を見ることができないレインズに、自分の物件が登録されているかをチェックすることができます。レインズも各売主専用に物件情報を確認できる専用のページとID/PASSを発行しています。それは売却を依頼した業者が売主に提示する【登録証明書】に記載されており、ご自身で確認ができます。
★ID/PASSは登録証明書の一番下(ピンク枠内)に記載されています
また【一般】媒介でも売主が希望すれば業者は業者間情報に掲載するようになっています。【一般】で依頼をしている売主も業者間情報に登録してもらい【登録証明書】をもらうようにすることをオススメいたします。
【登録証明書】を発行されていない時は、業者に証明書発行を要請して確認してみるべきでしょう。そもそも発行しないような業者は疑ってみるべきです。
不動産売却の闇【両手仲介】と【物件囲い込み】
先程も記載した【両手仲介】と【物件囲い込み】は連動しています。不動産業者は効率よく稼ぐために【両手仲介】を狙い【物件囲い込み】を行っているのです。
この流れは近年では不動産関連の情報ページやメディアなどにも取り上げられており問題視されています。下記ページは当社HPで更新しているコラム・不動産時事放談での記事です。
今後の日本は少子高齢化と家余りの問題から、不動産を購入する人自体が減ってきます。増えすぎた不動産業者はいずれ淘汰されていくでしょうが、現在は過渡期なため、少ないパイ巡っていかに自社の利益を確保する競争が激化していると感じます。
不動産業者の中には、あの手この手で自社の利益を優先するような姑息な業者が存在します。このような業者に当たらないためにも自分自身で売却を委託している業者に対し、下記内容のチェックをすることを推奨しています。
物件が業者間情報に登録されているか? |
どの情報サイトに登録されているのか? |
登録証明書の確認とレインズへの掲載確認 |
定期的な販売活動の報告 |
自分の物件に対するアクセスログの開示要求 |
売却依頼をして『後は業者にお任せ』してはいけません。自分自身でも理論武装をして、大事な資産を預けている業者にも目を光らせることが重要です。
次回は売却の際の【専属】【専任】媒介と【一般】媒介、どちらがいいのか?の疑問についてお届けします。