【私の実例】不良債権処理の現場、気が付いたら自宅に

企業倒産直後の悩める社長からの依頼

この実例は地場の輸入住宅販売会社が、1回目の不渡りを出した日から始まりました。私の知人である社長M氏のご子息からご相談を受け、後日、社長M氏を交え今後の事について話し合いを行ないました。M氏は倒産は避けられない状況にかなり動揺されており、精神的なケアをしながら、彼の意向(希望)をお聞きする事から始め、任意売却を依頼されました。この案件には約1年の日々を要し、私が債権者である5つの金融機関と交渉をして、3件の不良債権となっている不動産の売却を行いました。

糟屋郡志免町桜丘の事務所兼居宅

福岡市東区香椎台の居宅

アンピール祇園町の居宅

それぞれの物件にそれぞれの家族

香椎台の一戸建は、所有者が輸入住宅会社の創業前に新築した物件で、前妻A様が単身で居住されていました。桜丘の事務所付戸建住宅は、その輸入住宅会社の事務所として使用した後、前妻B様と子供達が居住、また「アンピール祇園駅」には、所有者と新しい家族が居住しておりました。

競売になれば所有している入居者や幼い子供、多感な時期のご子息がお住まいの各物件に、競売で落札しようとする不動産業者が物件調査に押し寄せます。さらに強制的に立退きを迫られ、金銭は全く残らず売却されてしまいます。

しかし競売になる前に物件を売却する事ができれば、今後の生活の再建資金として、金銭を残せる可能性があります。

所有者より任意売却の依頼を受けた当方は、債権者にその旨を伝え債権者にも当方による任意売却に同意して頂き、不良債権処理が始まりました。

任意売却の交渉について

この交渉で債権者にとって重要なことは今、任意売却で売る金額と、競売で落札された場合の金額では、どちらのメリットが大きいか?になります。

任意売却では、債権者に対し不良債権不動産の明確な売却金額と売却期日が確定します。一方競売の場合は、開札が行われるまで金額は確定せず、また落札金額が確定しても金融機関に対し落札金額からの配当は、諸手続きのため開札後約1年かかることもあります。

つまり金融機関は「競売」と「任意売却」の条件を天秤にかけて「競売で売却するか」「任意売却で売却するか」の選択をするのです。

では、任意売却によって整理された今回の物件実例を見てみましょう。

真の自立を果たした前妻

最初の処理案件である香椎台の一戸建は、福岡市東区のベッドタウンとして人気のある地域です。M氏から賃貸で居住していたのは離婚されて15年以上になる前妻A様で、ご自身で自立して単身で生活をされていました。今回の件は突然の事でしたので、非常に不安と戸惑いを感じられていました。しかし紹介者であるご子息の協力で、私の意見に耳を傾けてくださり、このままの状況で物件が売却出来なければ競売になり、退去せざる負えない可能性があることをお伝えしました。

所在地福岡市東区香椎台
面積土地:200.34㎡ ・ 建物:95.22㎡
構造木造2階建て
築年数昭和54年11月
最低売却価額1,318万円(平成15年時点の実例)

再出発の新たな住まいを堤エステートに依頼

何度か話し合いを重ね、私の説明で事情を理解されこれを機会に新しい物件を購入する気持ちになっていただきました。そこで堤エステートの会員にご登録いただき住み替えのご依頼を下さいました。

しかし、急なことでしたので無理のない資金計画で、尚且つ住環境をあまり変えたくないというA様のご希望で、近隣に立地する条件の良い物件を探し始めました。もちろん価格的にもメリットがあることも重要なので、一般流通市場と競売市場の両方から物件を探しました。

すると、近隣に平成6年築のマンションが830万円で販売されていました。この物件は、奇しくも不動産会社が競売物件を落札し、商品化したものを販売しているものでした。物件として何ら問題はなかったのですが、なかなか売却されずにいましたので、当方が仲介業者として交渉を行い730万円で値引き交渉が成立しました。かなり割安価格で購入することができましたのでA様はとても喜んでいただき、ここで新しい生活を始めることになりました。

その後、この香椎台の物件は債権者と交渉の末、仲介業者を間に入れ私が買取りを行いました。競売で公告もされていましたが住み替えが終了した後だったので、心配されていた不動産業者や近所の方にも悟られることもありませんでした。最後に債権者から裁判所に申し立てられた競売の「取下」も完了して、まずは一軒落着です。

隠密にかつ迅速に快適な住空間へ

次の案件はM氏のお住まいです。この物件の存在は、他の2物件の債権者には知られていませんでした。所有物件に抵当権を持たない債権者に知れるのは面倒です。早期の処理が求められます。しかしこの物件の債権者は関東の金融機関です。

建物名アンピール祇園駅
所在地福岡市博多区冷泉町
専有面積75.48㎡
構造鉄骨鉄筋コンクリート造12階建て
築年数平成9年2月
最低売却価額競売公告前に任意売却完了

物件は九州一の歓楽街中洲に隣接し、博多山笠で有名な櫛田神社のすぐ近くに立地していました。そして所有者とその家族が居住しておりました。もちろん、こちらも競売で落札された後は早期に退去しなければなりません。

私にて引越先のお手伝いもさせていただいたのですが、4人家族で社長の趣味の物や荷物もかなり多い上に、賃料も予算が限られている為、なかなか条件に合う物件が見つかりませんでした。

最終的には私の知り合いの賃貸業者の協力を得て、なんとか転居先を見つける事ができましたが、ご自身で賃貸を見つけることは、恐らく困難を極めたのではないかと思います。

その後、この物件も債権者と交渉の末、仲介業者を間に入れ私が買取りを行いました。こちらは債権者との交渉は遠方で意思の疎通が難しかったのですが、効率的な動きで競売の公告される前に無事交渉がまとまり、債権者から裁判所に申し立てられた競売の「取下」も完了して残りの不良債権は最後の1件となりました。

複雑な権利関係に難航する交渉

この案件の最後の物件である志免町桜丘の居宅は、3階建の居宅兼事務所のグレードの高い輸入住宅でした。自社の宣伝も兼ねた豪華な仕様の建築で、土地建物の原価は1億円程度、駐車スペースも6台確保できる広さです。倒産するまでM氏が事務所として利用し、離婚後も前妻B様と子供達が居住しておりました。

所在地糟屋郡志免町桜丘
面積土地:297.05㎡ ・ 建物:216.31㎡
構造木造3階建て
築年数平成3年10月
最低売却価額1,840万円(平成15年時点の実例)

しかし、この物件は今回の不良債権処理の引き金となった物件であり、前記した2件に比べ債権者の数も多く、交渉がとても難航した案件でした。それはこの物件を購入した時の法律「国土法」が起因していました。これはバブル退治として国が定めた法律で、300㎡以上の土地取引では地価の暴騰を抑えるため適正な価格でしか取引ができないというものでした。

M氏はこれを逃れるために、まずは土地の広さが300㎡を超えないように僅か2.5㎡を分筆して土地取引を行い、後に残りの土地を分けて取引を行ったため、無担保の土地があるとは一見しただけでは分からず、メインの大口債権者はこの土地を見落としていたのです。現在、建物が建っている土地の広さは約330㎡、しかしメインの債権者らが今回の不良債権として担保としている土地の広さは297.05平米のみで、残り約30㎡分の敷地についてメインの債権者らは権利を主張出来ない状態なのです。この状況では任意売却をするにも、そして仮に競売になっても物件の価値は大幅に下がります。

しかしこの空白の約30㎡の敷地に担保設定している、僅かな債権額の債権者Cがいて、今回の任意売却での配当額の相場を超えて主張してきます。

入札開始5日前!当社の買取で全てを円満解決に

債権者同士の思惑で交渉は何度も行き詰まり、複数の債権者の調整にはかなりの知恵・労力・忍耐が必要でした。最終的には期間入札開始の5日前になり当方(堤エステート)が、全債権者の意見の調整が図れた金額で購入をすることでようやく合意し、何とか「取下」になりました。期間入札の期間は1週間、それで落札されていれば、全て徒労に終わっていました。

こちらには、前妻B様と子供達が居住しておりましたので、前2件と同様に転居先である賃貸物件のお世話をして、これまた期限ぎりぎりで転居する事ができました。

この案件で全ての取引が終了して、最初にM氏を紹介して頂いたご子息の所に報告のために伺った時、感謝の言葉とお礼にと1本のワインを頂いた事がとても嬉しかったことを、今でもハッキリと憶えております。

当初は商品と考えていましたが結局は私の事務所兼自宅となりました。

この志免町桜丘の事務所兼自宅は意外と居心地がよく15年間居住しました

成功のポイントは倒産後の迅速なご相談

今回の案件では約1年の歳月を要し、最終的には3物件全てを堤エステートが買取りをすることで、お客様と入居者の方々及び債権者である計6社のご要望に応える事が出来ました。

今回の成功の最大のポイントは、債務者から堤エステートへの迅速な相談(依頼)にあったと確信しています。また、債権者との交渉によって金銭を残せる事だけではなく、債務者の家族に迫り来る競売という強制的な最終手段から、回避出来た事はとても大きな収穫であったと思います。もちろんプロデュースする不動産業者の手腕によって変わりますが。

三者それぞれのメリット

債権者(金融機関)競売より確実に、そして早い期間で不良債権(=売却金額から返済されるお金)を回収できた
債務者(所有者)精神的なサポートと、競売になると手元には全く金銭が残らないが今回の任意売却によって当初の希望通り住み替えと金銭を残すことができた
利害関係人(占有者)精神的なサポートと、周りに知られることも無く家族の住み替えができた

堤エステートでは長年に渡る競売不動産の取扱いや
不良債権処理の実績によって培われたノウハウと交渉力で
債務者と債権者それぞれにメリットのある不良債権処理を行います

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